「・・・・バーチャル世界でのMS訓練?
・・・確かに、その方法だと個人の能力を最大限に引き出すことが出来るね。
それにコロニーへの被害を心配することも、MSの消費にも頭を悩ませる必要がなくなる・・・か」



彼から伝えられた事。
それは、彼の父であり僕にとっては未来の義父様からの要請だった。

小父様からの要請は、電子の世界での特殊・・MS訓練が出来る環境。
MSは、旧型を使用してもやっぱり数に限りがあるから。
戦争が、以前に比べて本格化してきて・・・あの悲しみから志願者が以前よりも、多くなったと聞いた。

そのことを考慮しての、今回の要請。
・・・僕たちに出来ることは、それぞれの得意分野を最大限に活かしてそれらが行える特殊空間を作り出すこと。



僕たちが安心して暮らせる「自由」のため。
僕らは、自ら剣を持つことを選択した。


そして・・・もう一つ。
父様たちを殺したあいつ等に、復讐するため。


そのためには、自らの手が奴らの汚らわしい血によって染まろうとも・・厭わない。








02. 廊下








コーディネイターで構成される軍隊・・・ザフトの兵士たちを養成する士官学校。
今期のアカデミー生たちは歴代の卒業生たちよりも優秀な人材が揃っていた。



全ての実技・筆記においてほぼ満点を取得する紺瑠璃色の髪とエメラルドの瞳を持つ少年。
そんな少年と同等の実力を持ち、常に傍らにいる鳶色の髪とアメジストの瞳を持つ少女。

そんな彼らに僅差だがそんな僅かな点数で万年彼らに負けている白銀色の髪とサファイアの瞳を持つ少年。
彼らの中で最年少であり、音楽を心から愛する若草色の髪とトバーズの瞳を持つ少年。

白銀色の髪を持つ少年とは幼い頃からの付き合いであり、
彼が癇癪を起こす時は必ずそれの宥め役となる黄金色の髪とヴァイオレットサファイアの瞳を持つ少年。
紺瑠璃色の髪を持つ少年と鳶色の髪を持つ少女と一番友好的な橙色の髪とアオライトの瞳を持つ少年。


彼らは常に上位を独占し、全体の点数を毎回上げている功績者でもあるが、
本人たちはいたって気にしてはいない。





そんな彼らはいつものように実技訓練のあるトレーニングルーム前の廊下に自然と集まっていた。



「今日は・・・プログラム化された世界・・・バーチャルでの実技訓練だ」

「実技? ・・MSの特殊訓練か」

「そうだ。 実際にMSを使用していては何かと不便な上に怪我をしてしまうからな。
それに・・・いくらザクやグフが量産型でも数に限界がある。
訓練の時に毎回破壊しては軍資金に関しても色々と面倒になるだろう?」

「そこで、バーチャルが活用されたんだ。
バーチャル世界に自分たちの神経を繋いで実体験できるように改良してね。
それにより、本当にMSに乗っている感覚になるってわけ」



紺瑠璃色の髪を持つ少年が橙色の髪を持つ少年に今から行われる訓練内容について説明を始めた。
そんな紺瑠璃色の髪を持つ少年の言葉を引き継ぐように
彼のすぐ隣にいた鳶色の髪を持つ少女が鈴が転がる声を廊下に響かせながら紡いだ。



それらのプログラムと装置の改良したのは鳶色の髪を持つ少女と紺瑠璃色の髪を持つ少年である。


彼らは自分たちにとって最も得意とする分野を利用して、プログラムを完成させた。
そのことを彼らに伝えないのはただ単に面倒だという考えもあるが、
それらを製作したからとハンデがあると思われるのが嫌だからでもある。
彼女たちは勝負事や訓練に対して全て平等と考えているため、
不穏分子となりかねない事柄を教えることはない。




タイミングよく、彼らの会話が終わった直後にトレーニングルームの扉が開いた。




《各自、指定されたカプセルへ向かってください。
カプセルに入った後訓練が終わるまでは内側から開きませんから、注意してください。
尚、皆さんが搭乗なされる機体はすべてOSが初期化されています。
各個人で構築してください》




部屋に入った彼らにアナウンスが流れた。
トレーニングルームにはこれから行う訓練のための装置以外なく、
聞こえてくるアナウンスは装置を制御する制御室から流れていることが予測された。




彼らはこの実技の成績順にそれぞれのカプセルへ向かった。
この訓練は2人1組のペア戦でもある。
コンビネーションによって何処まで個人の能力を上げられるか、それも重要な鍵となるからである。





第一カプセルには万年首位を走るアカデミーでは初のツートップである
紺瑠璃色の髪を持つ少年と鳶色の髪を持つ少女が入った。

第二カプセルにはそんな2人に毎回負けている白銀の髪を持つ少年と彼を唯一宥められる黄金の髪を持つ少年が入った。

第3カプセルにはそんな彼らに苦笑いを浮かべながらも背後に不穏な空気をかもし出す若草色の髪を持つ少年と
この中では多分まともな思考である橙色の髪を持つ少年が入った。




《各員搭乗を確認。 バーチャル起動。 1組残るまで訓練が終了いたしませんのでご注意ください》




通信越しに聞こえる教官の声にそれぞれカプセル内で頷いたのを最後に、
彼らはバーチャル世界へ旅立った・・・・・。

バーチャル世界は電脳によって作り出された世界であるが、その中はプログラムとしても最高峰である。
もちろん、全てを体験するために5感全てカプセルに繋がれる回線によって支配され、脳に直接刺激を与える。
そのため、こちらの世界で体験した痛みなども現実世界で傷として現れないものの
衝撃や痛みなどを感じることは出来るのだ。
そして、現実世界では廃墟のコロニーを使わないと訓練できないことでも、
このバーチャル世界を利用すれば影響を考えずに自身の考え出したプログラムを作り出せる。



紺瑠璃色の髪を持つ少年と鳶色の髪を持つ少女は自分たちの指定された機体に向かうべく、共に行動した。
この訓練は原則的に単独行動をすることは出来ない。
プログラムによって作り出された敵をそれぞれ得意の武器で薙ぎ払い、ポイント地点にある機体に乗り込んだ。



「こんな時、この世界は便利だよな・・・・。 現実では到底出来ないぞ」



紺瑠璃色の髪を持つ少年は手元に持っていた長刀2本を一瞬のうちに消し去った。

そんな少年の行動を見ながら苦笑いを浮かべていた鳶色の髪を持つ少女は、
目の前にある機体のOSを構築した。



「ココでの訓練は、白兵戦じゃないよ? MS戦闘の訓練でしょ。 アスランの機体は構築しておいたよ。
僕の機体を構築したら、行動開始だからね」

「了解。 相変わらず、プログラミングが早いな・・・」



既に構築されたMSのOSを見た少年は、感心した様子を見せた。
そんな少年の行動を横目で見ながら少女は隣にある自分の機体に乗り込んだ。


一見、暗号のようで失敗作のように思えるプログラムだが、
魔法がかかったかのように他のプログラムよりも的確で尚且つ正確なプログラムが構築されていた。



少女のプログラミング能力と情報処理能力はアカデミー・・・いや、プ
ラント中を探しても彼女に勝てる人材はいないと思えるくらい超一流のプログラマーである。
また、彼女の趣味がハッキングであるため、
どんなに頑丈なセキュリティも彼女にかかれば3分も経たずに突破されるほどの天才であった。



そんな彼女が構築したMSのOSは彼女が思う以上に、
高性能で機体事態は全シリーズの量産型と全て同じなのだが、
機動力がまったく違っていることに気付くのは、彼らの攻撃を受けたものたちであろう・・・・。



「コッチも終わったよ。 ・・・・ココからだとイザークたちよりもニコルたちのほうが近いね」


《そうだな・・・。 じゃあ、あいつらを先に片付けるか。 イザークたちはほっといても向こうから来るだろう》




紺瑠璃色の髪を持つ少年の言葉に頷きで肯定した鳶色の髪を持つ少女は、
最大出力を駆使して目標ポイントからあまり動いていない若草色の髪を持つ少年と橙色の髪を持つ少年に向かった。
一方、漸く自分の搭乗する機体のOSを構築した橙色の髪を持つ少年は
モニターに映る2機の機体に驚きを隠せなかった。



「あいつら、もう構築したのかよ! 始まってまだ10分も経っていないぜ!?」


《キラさんでしたら可能でしょうね。 ラスティ、いつまでそこにいる気ですか。
そこにいると良い的になりますよ》




若草色の髪を持つ少年は橙色の髪を持つ少年にそう言い捨てると、
自身の使いやすいように構築されたOSを使用しながら、
これから行われるであろう攻撃のシミュレーションされたデータを送った。
若草色の髪を持つ少年から転送されたデータを見た橙色の髪を持つ少年は、
慌てて完成したばかりのOSを立ち上げ、回避プログラムを実行した。
こちらに向かってくる2機との戦闘を開始しようと体勢を整えたと思った矢先、
それまで反応がなかったMS感知システムが2機の所在を感知した。


片方が彼らに向かって『MA-M3 重斬刀』を振り投げてきた。
この武器は通称サーベルとも呼ばれ、接近戦に適しているが投げ飛ばして敵に当てることも可能である。
その攻撃を受けた若草色の髪を持つ少年たちだが、
難なく交わしたと思った矢先にもう片方の機体が『M68 キャットゥス 500mm無反動砲』を発射した。
至近距離で撃たれたのか橙色の髪を持つ少年の機体は戦闘不能となり、
残るは若草色の髪を持つ少年の機体のみとなった。

彼も負けじと『MA-M3 重斬刀』を投げたがサラリと綺麗にかわされ、
バランスを崩した状態で急所めがけて『M68 キャットゥス 500mm無反動砲』を撃たれ、
見事に命中したのか戦闘不能となった。



若草色の髪を持つ少年たちペアの機体を戦闘不能に追いやった紺瑠璃色の髪を持つ少年たちペアは、
次のターゲットである白銀色の髪を持つ少年たちペアがこちらに向かっていることを
感知システムの半径を広げたプログラムによって確認されていた・・・・。





そんなことも気付かない白銀色の髪を持つ少年たちは先で見せられた彼らの戦闘に黄金の髪を持つ少年は呆れ、
常に勝負を持ちかける白銀の髪を持つ少年は自身の闘争心に火をつけていた。



「俺たちも行くぞ! 今日こそ、あいつらに勝ってやる!!」


《・・・リョーカイ。 結果が見えていると思うのは、俺だけ?》

「つべこべ言うな! 悔しくないのか! 目の前であのような戦闘を見せ付けられて!」

《悔しくないって言うか・・・将来敵じゃなくて本当に良かったとしか思えないんだけど?》




闘争心の火がついた白銀色の髪を持つ少年に何を言っても無駄だと分かっている黄金色の髪を持つ少年は、
それ以上彼を刺激することなく、今は訓練中だと思い出させた。

そんな彼に安心した様子を見せた黄金色の髪を持つ少年だったが、
警報が鳴り響いていることに気付いて慌てて回避システムを作動させた。



黄金色の髪を持つ少年から見て正面にいる機体の体勢が
『M68 キャットゥス 500mm無反動砲』を放った後の体勢に似ていたため、自分が狙われたということを瞬時に悟った。
体勢を整え、自身もまた『M68 キャットゥス 500mm無反動砲』を発射したが発射角度から範囲を割り出したのか綺麗に避けられた。
そのタイミングを見逃す白銀色の髪を持つ少年ではなく、『MA-M3 重斬刀』を2機に向かって投げた。
避けられるほどに余裕のある距離だったため、2機は危なげもなくその攻撃を避け、
『MMI-M8A3 76mm重突撃機銃』を白銀色の髪を持つ少年たちに向かって連射した。


この武器は反動によるマニピュレーターが激しくブレるために、命中精度が極端に低い。
しかし、彼らはその性能をよく知っているためなのかOSを弄る際に、その誤差修正プログラムも一緒に組み込まれている。

そのため、命中率が悪いとされるライフルであるが、
黄金色の髪を持つ少年の機体に命中し、戦闘不能へと追いやった。
その戦闘不能と同時に紺瑠璃色の髪を持つ少年たちペア以外に、
生き残った白銀色の髪を持つ少年もまたほぼ同時に戦闘不能となった・・・・・。







その結果、圧倒的の強さで紺瑠璃色の髪を持つ少年と鳶色の髪を持つ少女がこの実技を制した・・・・。









書き下ろしのオマケは、ココから。
訓練直後のお話です。













2006/12/12
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