「私たちに出来ることは、無事をお祈りするだけです。 教えてくれてありがとう。 突然の失踪。
・・・・私たちに出来ることは、こうして彼女たちの身の安全を神に祈ることだけ・・・・・。
光と闇のレジェンド
昼休みに伝えに来てくれた1年生たちの言葉をキラは授業中の間、思い出していた。
(アスハさんたちが、誘拐・・・・無事だといいのに・・・・)
例え、キラを目の敵にしていようともキラは、攫われたというアスハやホーク姉妹の無事を祈らずにはいられなかった。
放課後、キラたちはヤマトの家から何時も送り迎えをしてくれている車に乗り、自宅へと帰った。
「それにしても、誘拐なんて・・・・」
勉強の合間に、フレイは昼休みに聞いた事をきり出す。
「そうよね。 お金目当て誘拐かしら?」
それを受けてミリアリアも行方知れずのアスハとホーク姉妹の事が攫われた事を詮索しだす。
「・・・・・」
キラは、自分に対して嫌なことしかしなかったアスハやホーク姉妹が心配だった。
「キラ? あんまり心配しない方がいいわよ」
フレイは、キラが何を考えているのか判り溜め息をつきながら言った。
「そうよ。 普段の行いが悪いからこうなっただけだし」
それでも、キラは心配をしてしまう。
「でも、じゃあないわ? あいつ、キラに何してた? わかってるでしょ」
フレイは、今までアスハにされてきた事を思い出してキラに詰め寄る。
「それでも、無事でいてほしいし・・・・」
キラは、今の自分の気持ちを二人に伝えた。
「・・・・キラって優しいわよね」
ミリアリアはキラの人を思いやる気持ちに嬉しそうにしていた。
「・・・・優しくなんてないよ・・・」
ミリアリアのその言葉にキラは首を振り違うと示す。
「もうこの話は止め止め! もっと、違う話しましょう」
キラの様子を見て、フレイは気持ちを切り替えさせようと明るい声を出していった。
「そうね。 ねえ、今度の日曜日に皆でショッピングいきましょう」
その後、キラたちはその話をして、気持ちを切り替えていった。
その日の夕食の後、キラは兄のカナードに話しかけた。
「兄様。 今日学校でアスハさんとホークさんとこの姉妹が行方不明になったって噂聞いたの」
今日、昼間あたりからカナードの通う大学部でもその話が流れていた。
「・・・・え?」
カナードは忌々しいと言わんばかりの顔をする。
「・・・・・」
キラに、もうこれ以上悩むなと念をおす。
「うん、兄様」
カナードはキラの額にキスを一つ送って部屋に入れた。
(ああ、ここはいつもの夢の中・・・・)
何時も見る夢の中にいるのだとキラは思った。
「 」
身体に伝わる振動で、彼が喋ったことがわかり、キラは彼の顔が見たくて彼の腕なのかで身体を反転させた。
「会いたかった・・・貴方に」
キラからも抱きしめてくれる彼にそっと縋りついた。
「 」
彼も、自分に会いたかったのかなとキラは心の中で思った。
「 」
そっと、彼の胸に顔をうずめそう囁く。
「キラ様。 そろそろ起きてください。 お目覚めのお時間ですよ」
キラつきのメイドのアイリーンが、声を掛けながら部屋の扉をノックしてくる。
「あ、もう朝・・・・」
眩しい朝の光が、カーテンの隙間から零れている。
「おはようございます。キラ様」
キラが起きている事を確認してから、アイリーンは部屋へと入ってきて、丁寧にカーテンを開け、朝の空気を入れ替えるように窓を開ける。
「今日も、いい天気ですよ。 ハンカチをいつもより一枚多めにお持ちくださいね」
アイリーンにそういわれながら手渡されたハンカチを丁寧に鞄の中へとしまうと、家族の所在を確認する。
「いえ。 桔梗の間(リビング)の方で朝刊をお読みになってられますよ」
そうして、キラの日常がまた、静かに始まった。
〜異世界・ダークネルス〜
《・・・・闇に潜みし悪霊たちよ。 今こそ、汝らの女神をこの地に! 『女神』召喚!!》
召喚の呪文を唱えて、黒の巫女のミーアは気絶してしまった。
「やはり、紛い物は紛い物だな。 この機械を使っても、召喚できたかどうか・・・・」
黒い微笑を浮かべながら、メサイアを治めている皇帝デュランダルはミーアの側においてある不気味な装置を見詰める。
「さて、召喚してもらった、女神を迎えに行かないとな。 シン、そこにいるかい?」
デュランダルがそういえば、柱の影からシンと言われた少年が現れた。
「何、父上?」
パッチンとデュランダルが指を鳴らすと、何もない空間にこの世界の地図が浮かび上がってきた。
「・・・わかった。 ここに、連れてくればいいんだな?」
デュランダルの言葉を聞いて、シンはその場所から離れていった。
「さて、他の国の皇子たちにも動いてもらわないとな」
そういいながら、手元にあった通信装置をオンにして、通信を繋げた。
【ミネルバ:城内。ゴミ置き場】
「もう! なんなのよ! ここ!!!」
赤い髪のツインテールの少女が喚いていた。
「臭い!! もう嫌!!」
ゴミ置き場で喚いていた少女に、1人の少年が声を掛けてきた。
「誰でもいいわ! ここから引き上げてよ!!」
喚いている少女に手を差し伸べて、少年は少女の身体を立たせてやった。
「よっと。 取り合えず俺の住んでるとこ行こうか」
少女は、少年の言葉に礼を言った。
「じゃあ、行こうか」
少年に連れら少女は少年が住むところへと向かった。
同時刻。【メサイア:迷いの森。ヘドロ沼】
「なんなの・・・・。 臭い・・・」
赤い髪のショートヘヤーの少女は、呆然と悪臭漂う泥沼にどっぷりと浸かっていた。
「おい。 そこのおまえ」
自分を汚いものを見るような目で見る少年に少女はキツイ眼差しを向けた。
「おまえを迎えにきたんだ。 父上の命令でな」
そう言って、ルナマリアは、ドロを手に掴んで目の前にいる少年に投げつけた。
「なっ! なにすんだよ!!」
二人は、誰もとめるものがいなかったため、力尽きるまでドロを投げ合っていた。
同時刻。【クサナギ:城下。豚小屋】
「・・・・・豚・・・・なのか? ・・・っよ、寄るな!!!」
金の髪の方に付くくらいの少女は、迫ってくる豚と豚の排泄物の匂いに恐怖を覚えていた。
「あv いたいたv 迎えに来たよv 僕の女神」
豚に迫られていた少女の耳に、暢気な声が聞こえた。
「・・・・何もんだ! おまえ!!」
少女の問いに少年というより青年は、うっとりしながら少女の顔を見詰めてそう言う。
「・・・・ところで、ここは何処なんだ?」
少女は、自分が何故、このような汚い豚小屋に落ちなければいけないのか納得がいかなかった。
「そうだよね。 君にこの場所は合わないよ。 じゃあ、僕の住んでいる城に行こう」
青年の言葉に少女は信じられない顔をする。
「信じてくれないのかい? じゃあ、さっさと城に行こう」
そういうなり、青年は少女の腕を掴むと引っ張るように歩き出した。
「あ、そこに馬車止めてあるから大丈夫だよ」
少女が何か言う前に、青年は馬車の中に押し込んでしまう。
「さあ、城に戻ってください」
青年の一言で、馬車は一路城へと向かった。
各城で、皇子たちに拾われてきた少女たちが落ち着いた頃を知っているみたいに、黒の巫女から連絡が入った。
「お前、ルナマリアか。 お前もここに落ちたのか?」
感動の対面を果たしていた時、扉からピンクの髪に露出の激しい衣装を身に纏った少女が現れた。
「女神様たち。 ようこそダークネルスに。 私は黒の巫女・・・ミーア=キャンベルですわ」
ミーアの言葉にシンは文句を言い出す。
「冗談ではないですわ。 この私が召喚した方々ですもの」
父親である皇帝からの言葉でシンは黙ってしまう。
「私たちをこんなところに連れてきて、何が目的だ!」
そういうと、ミーアは水鏡に手を翳した。
「水鏡よ。 我の願いを聞き届け、かの地を映し給え」
その途端、おぼろげな映像が水の表に浮かびだした。
「わからないじゃないか? 何が映っているんだ?」
そう言っている間に、水鏡には、紺瑠璃色の髪をした美しい容姿の青年が映し出されていた。
「「「・・・・」」」
その容姿に、覗き込んでいた召喚された少女たちは一目でこの青年が欲しくてたまらなくなった。
「この方は、オーブの一国であるエターナルの皇子。 アスラン=ザラです」
この黒の巫女のミーアもこの青年アスランに思いを向けていた。
「オーブとは、なんなんだ?」
このミーアの言葉にカガリは、この世界を手に入れれば水鏡に映る青年を手に入れられる可能性を見つけた。
「手に入れて欲しいのです。 この世界を・・・貴方たちのお力で」
黒い微笑を浮かべたミーアを見詰めて、カガリたちは各々、あの世界を手に入れようと考え始めた。
「判った。 あれを手に入れるように、まあ、力は貸そう」
ミーアに向かって、少女たちは黒い笑みを浮かべていた。
(まあ、精々私のために頑張って欲しいものだね)
それを見て、デュランダル皇帝は薄っすらと口元に笑みを浮かべていた。
――――― 夢は夢でしかなかったと気づくのはもう少し後・・・・
不思議な夢にて出会う男女。
2006/09/05 |