「あんなヤツの貢物なんか忘れて、アスランの誕生を祝して茶会でも開こうぜ」
俺たちがこの世で最も嫌うヤツからの貢物が届いて、せっかくの祝いがとんだ雰囲気になったな。
13. コーヒー
レクレーションルームにいい香りが漂っている。
「これ、なんていう豆ですか?」
ニコルは、コーヒー豆が入っていた入れ物を嗅いでいた。
「それは、〔モカマタリ〕というらしい」
ニコルはゆっくりとコーヒーミルで挽いてからコーヒーサイフォンで本格的に入れている。 「紅茶は〔ディンブラ〕だ」 軟らかな薔薇の香りがする紅茶だ。これは、イザークが淹れている。
「これは、キラさんの大好きな紅茶ですね。 色々とバリエーションが楽しめるんですよね」
そうこうしてるうちに、外に出ていたミゲルとラスティが帰ってきた。
「ただいま」
そう言って、手にしていた四角い箱をニコルに手渡した。
「あ、ありがとうございます。 ここのケーキ、アスランとキラさんが好きなんですよ。
アスランは甘いものはキラが作ってくれるものしか食べないが、
「あ、この金いつものところ行き?」
先ほど、アスランたちから頼まれたものを売り払ってきたお金を、ミゲルが空いているテーブルに置いた。
「お、結構あるね今回のも」
置かれたお金をディアッカは眺める。
「はい、もちろん。 地球に居られるマルキオ導師にラクスから送っていただきます」
毎回毎回オーブのカガリから送ってくる物をアスランは換金しては、親を亡くした孤児を育てている。
「これで、クリスマスに子どもたちにプレゼントや冬用の洋服が買えるな」
ニコニコと、ラスティはニコルに笑いかける。
「これだけあれば、春先までは大丈夫でしょう」
ニコルも、にっこりと笑う。
「わあ、いい香り」
いつの間にか、キラとアスランがレクレーションルームの入り口に立っていた。
「今日の豆は、なんだ? イザーク」
入りながらアスランは、豆の持ち主だろうイザークに聞いた。
「モカマタリだ」 アスランは、部屋に漂う香りを嗅いだ。
「そう言っていたと、ラクスに伝えておこう」
イザークは嬉しそうな顔をアスランやキラに向けた。
「あ、これは、ラクスからだったんだ」
机の上に乗っていたコーヒー豆や紅茶の葉を見つけてキラは言う。
「ああ、頼んだら色々送ってくれた」
イザークたちの目の前に置かれている品物を見て、キラはラクスの優しい笑顔を思い出した。
「お休みになったら、お礼がてらいかないといけないねアスラン」
キラは、アスランの顔を見詰めながらいう。
「あ、アスランにキラさんそこに座ってくださいね。 もうじきコーヒーと紅茶入りますから」
ニコルは、たったままのままのアスランとキラに座るように促す。
「あ、これ。 買って来たんだ」
二人が座ったのを確認したミゲルが、買って来たケーキの箱を見せた。
「わぁ、嬉しいいな。 ここのプリン好きなんだ」
箱を開けながらミゲルは答えてやる。
「ほんとだ。 ありがとうミゲル」
箱の中に、プリンがあることにキラは嬉しそうな顔をした。
「ほら。 あ、アスランはこれでよかったか?」
ラスティがキラの前にプリンを置き、豆乳を使った抹茶風味のケーキを目の前に置いてやる。
「ああ、ありがとうラスティ」
置いてくれたラスティにお礼をいった。
「アスランにブラックコーヒー、キラさんにはミルクティを入れました」
テキパキとニコルは、皆の前に入ったコーヒーと紅茶を置いていく。
「さあ、アスランの誕生日を祝してお茶会しようぜ」
準備が整ったのを見たディアッカの一言で、楽しいお茶会が始まった。
2007/03/20 |