「あんなヤツの貢物なんか忘れて、アスランの誕生を祝して茶会でも開こうぜ」



俺たちがこの世で最も嫌うヤツからの貢物が届いて、せっかくの祝いがとんだ雰囲気になったな。
まぁ、ヤツが嫌いなのは何も姫やアスランだけじゃない。
あまり人に関して好き嫌いがないニコルはもちろん、あそこまで露骨に嫌悪丸出しのイザークも珍しい。


・・・・まぁ、大抵の人間が大丈夫な俺でさえヤツの図々しさが気に入らないが。



俺たちにとってヤツの認識は、ただの「知っている人」だ。
それ以上になることは、この先絶対ないと断言できる。




・・・・・ヤツへの制裁は追々皆で作戦を練るとして、今は戦場で背中を預ける戦友の誕生を祝おう。
戦場でその命を散らさなかったことを、実感する為に・・・・・・。








13. コーヒー








レクレーションルームにいい香りが漂っている。



「これ、なんていう豆ですか?」



ニコルは、コーヒー豆が入っていた入れ物を嗅いでいた。



「それは、〔モカマタリ〕というらしい」

「〔モカマタリ〕何処のですか?」

「地球産のイエメンの豆だそうだ」

「へえ。 よく手に入りましたね」

「ラクスにコーヒー豆を趣味で集めてる知り合いがいて、相談したらそれを送ってきてくれたそうだ」



ニコルはゆっくりとコーヒーミルで挽いてからコーヒーサイフォンで本格的に入れている。
紅茶よりコーヒーが好きな連中のために用意する。

「紅茶は〔ディンブラ〕だ」

軟らかな薔薇の香りがする紅茶だ。これは、イザークが淹れている。



「これは、キラさんの大好きな紅茶ですね。 色々とバリエーションが楽しめるんですよね」



そうこうしてるうちに、外に出ていたミゲルとラスティが帰ってきた。



「ただいま」

「今、帰ったぞ。 あそうだ、これ、ニコルに頼まれたもの」



そう言って、手にしていた四角い箱をニコルに手渡した。



「あ、ありがとうございます。 ここのケーキ、アスランとキラさんが好きなんですよ。
結構、あっさりした舌触りがいいみたいで、甘党でないアスランが残さず食べるくらいですからね」



アスランは甘いものはキラが作ってくれるものしか食べないが、
例外としてプラントで売られているケーキだけは食べれたのだった。
ここのケーキには、和食などで使われる豆乳とかが使われていて、あっさりとした食感もアスランが食べれる要因だった。
キラはこのお菓子の中で豆乳で作ったプリンがお気に入りだった。



「あ、この金いつものところ行き?」



先ほど、アスランたちから頼まれたものを売り払ってきたお金を、ミゲルが空いているテーブルに置いた。



「お、結構あるね今回のも」



置かれたお金をディアッカは眺める。



「はい、もちろん。 地球に居られるマルキオ導師にラクスから送っていただきます」



毎回毎回オーブのカガリから送ってくる物をアスランは換金しては、親を亡くした孤児を育てている。
マルキオ導師に送っていた。
マルキオと親交のあるラクスに託し受け取ってもらっている。



「これで、クリスマスに子どもたちにプレゼントや冬用の洋服が買えるな」



ニコニコと、ラスティはニコルに笑いかける。



「これだけあれば、春先までは大丈夫でしょう」



ニコルも、にっこりと笑う。



「わあ、いい香り」



いつの間にか、キラとアスランがレクレーションルームの入り口に立っていた。



「今日の豆は、なんだ? イザーク」



入りながらアスランは、豆の持ち主だろうイザークに聞いた。



「モカマタリだ」

「いい香りだ」

アスランは、部屋に漂う香りを嗅いだ。



「そう言っていたと、ラクスに伝えておこう」



イザークは嬉しそうな顔をアスランやキラに向けた。



「あ、これは、ラクスからだったんだ」



机の上に乗っていたコーヒー豆や紅茶の葉を見つけてキラは言う。



「ああ、頼んだら色々送ってくれた」



イザークたちの目の前に置かれている品物を見て、キラはラクスの優しい笑顔を思い出した。



「お休みになったら、お礼がてらいかないといけないねアスラン」

「そうだな」



キラは、アスランの顔を見詰めながらいう。



「あ、アスランにキラさんそこに座ってくださいね。 もうじきコーヒーと紅茶入りますから」



ニコルは、たったままのままのアスランとキラに座るように促す。



「あ、これ。 買って来たんだ」



二人が座ったのを確認したミゲルが、買って来たケーキの箱を見せた。



「わぁ、嬉しいいな。 ここのプリン好きなんだ」


「あ、あるぞ」



箱を開けながらミゲルは答えてやる。



「ほんとだ。 ありがとうミゲル」



箱の中に、プリンがあることにキラは嬉しそうな顔をした。



「ほら。 あ、アスランはこれでよかったか?」



ラスティがキラの前にプリンを置き、豆乳を使った抹茶風味のケーキを目の前に置いてやる。



「ああ、ありがとうラスティ」



置いてくれたラスティにお礼をいった。



「アスランにブラックコーヒー、キラさんにはミルクティを入れました」



テキパキとニコルは、皆の前に入ったコーヒーと紅茶を置いていく。



「さあ、アスランの誕生日を祝してお茶会しようぜ」



準備が整ったのを見たディアッカの一言で、楽しいお茶会が始まった。





















2007/03/20
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