「喜んで・・・くれるかな?」



母様と父様の大切な形見の一つ。
父様が僕に託してくれた大切なもの。

母様が父様に贈り、父様が僕に贈ってくださったもの。
僕が、これを贈る相手は・・・・昔からあの人ただ1人。




僕にとって、とても大切なものだからこそ。


彼に、持っていてもらいたいの・・・・・・・。








11. 時計








「何これ?」



ふと見ると、机の上に誰かへのプレゼントが乗っていた。



「ああ、それか・・・オーブのじゃじゃ馬から俺に誕生日プレゼントだと、さっき来た」



プレゼントという割には、汚い包み方を見てキラは眉を顰める。
まるで、汚いものを見るかのように。



「・・・・どうするの、それ?」

「ラスティかミゲルにでも、開けてもらおうかなとは思ってるんだ。直接、触りたくもないし」



月にいた頃から、アスランに好意を向けていたオーブのカガリが自分の気を引きたくて、
何かあることに物とかを送ってくる。

それを見るたびに、キラは機嫌を悪くして拗ねて、部屋に篭もって出って来なくなり、
アスランや周りを困らせていた。

キラの機嫌が悪くなると、もれなくアスランも不機嫌絶好調な状態になるので、
仲間たちは送ってくるなよと、心の中で何時も思っていたりする。



暫らくすると、部屋に来客のインターホンが鳴った。



「よ!来たぜ」

「また、来たんだろ?じゃじゃ馬さんからの」



インターホンから、仲間のミゲルとラスティの声が聞こえ、アスランは二人に入るように促した。



「で、今回のはこれ?」



机の上にあったのを、ラスティが示した。



「ああ、悪いが頼む」

「良いって。 気にするなって」

「じゃあ、早速開けるわな」



包装なんて気にせずに、ミゲルは大胆に破り捨ててその残骸を横にいたラスティがすぐさま持ってきていたゴミ袋に入れていった。



アスランは、カガリが触ったものに触ると体中に蕁麻疹が出る。
そのために、ミゲルやラスティが代わりに処理をしてくれていた。



「・・・・・わあ、趣味悪・・・・」

「・・・・成金趣味丸出し・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・きもい・・・早く処理してきてくれるかな。 それ」



包装をはがして現れた箱を開けて中を見ると、何処の成金趣味が作らしたのかというような、
キンキら金で色んな宝石が散りばめられていた。



「姫v 例の来たって?」

「アスランは、大丈夫ですか?」

「そんな物はさっさと処分して来い!」



そんな事を言いながら、アスランたちの部屋へとディアッカ、ニコル、イザークが断りもなく入ってきた。
そのことに別段、怒ることもなくキラとアスランは3人の入室を拒むことはしない。



「・・・・・うわぁ・・・」

「なんですか? これ・・・」

「・・・・・なんなんだ、それは!! そんな趣味の悪いもの! さっさと処分して来い!!!」



悪趣味な時計を見た途端、イザークの怒鳴り声が部屋に響き渡る。
ディアッカ、ニコルも同じ意見のようで、皆してミゲルとラスティをじっと見た。



「わかったよ・・・さっさと行ってきますよ・・・」

「まあ、出来るだけ高くうっぱらってくるわv」

「頼む・・・」

「宜しくねv」



皆に見送られてミゲルとラスティはアスラン宛てに送られてきた時計を持って
アスランとキラの部屋から出ていった。



「今回は、プラントにいる間でよかったですね」

「まあ、こっちにいる時に、送ってこられても迷惑だぜ」



今は、Gを奪取してプラントに帰還したとたんに、嫌なものがアスラン宛に送られてきていた。



「・・・・断らんのか?」

「拒否はしてるんだが、何処で調べてくるのか居場所を突き止めて、送ってくる」

「しつこくてね・・・・どうしたらいいんだか・・・・」



溜息を零しながらキラとアスランはお手上げという風なポーズをとった。



「まあ、一番はその存在を消す・・・がいいんだけどな」

「まあ、もう少しでそれもなくなるさ」

「そうですね。 証拠さえ揃えば、あの国も落とせますから」



オーブはキラの両親の命を連合のそれもブルーコスモスに売った者が治めている。



キラの両親はメンデルで遺伝子の研究を進めていた。
遺伝子異常を持って生まれた子どもたちを救うための研究をしていた。
それをよく思わないブルーコスモスの手によって、その命を奪われたのだった。

そこ事を、ここにいるメンバーは皆知っている。
いや、今、ここにはいないあの二人も知っている。



何故にオーブの治めている者が裏切ったのか・・・・
それは、アスハを脅かす最大のスキャンダルをキラの両親は知っていたのだ。
そのスキャンダルは、ブルーコスモスよりな考えを持つアスハ・・・オーブにとって最大の弱みになる。
その弱みを知る唯一の存在であるキラの両親を、
彼らはブルーコスモスに所在を教えて暗殺したのであった・・・・・。
その事を事前に察したキラの両親ヒビキ夫妻は、
その詳細の全データを親友であるザラ夫妻に託していた。



その事を、キラは13才になったときに知らされた。
アスランと共に・・・・。





それから、キラは両親を死に追い遣ったオーブをアスハを追い落とす事を心に誓っていた。

それなのに、キラのそんな心をかき乱す存在が、アスハの姫であるカガリだった。


キラとカガリ。
接点がないように見えるが実は、母親同士が従姉妹という繋がりがあった。
キラが幼い頃には頻繁に、
月のコペルニクスの自宅によくヴィアを訊ねて娘であるカガリを連れてやってきていたのだった。
その時に出会ったアスランに一目ぼれをしたカガリが
アスランに猛烈にアタックを仕掛けていた。
その頃から、カガリはアスランの側にいつもいるキラを目の敵にしだしていた。

キラもその頃からアスランをアスランもキラをただの幼馴染としてではなく、
ずっと、側にいて欲しい人という認識が出来始めていた。
そんな彼らの目の前に現れたカガリに対し、
アスランはキラの親戚だと思っていた認識から徐々に敵と認識を直し、
キラもまた自分からアスランを奪うものと感じるようになっていった。
キラとアスランがお互いを意識しだした頃に、キラの両親は、
仕事先のメンデルで暗殺されたのだった。

その後、キラはアスランとアスランの両親と共に、
安全であるザラ家の本家があるコーディネイターだけで構成されるコロニー・・・プラントに行ったのだった。





あれから、数年。
今もカガリはアスランを手に入れようと追い求めている。



「・・・・・・」

「キラ? 大丈夫か?」



何かの考えに囚われているキラが心配になりアスランは声を掛ける。



「あ、うん。 大丈夫だよ」



アスランが心配してるのに気づきキラは儚げな笑顔をアスランに向けた。



「こっちおいで」

そんなキラを見てアスランはキラを手招きして、自分お膝に乗るように示した。
人目があろうとなかろうとアスランは気にしない。
今、キラの気持ちを明るくさせることだけに囚われていたから。


アスランが自分を手招きしているのに、キラはアスランの側に近寄らなかった。
ある事をするために。



「あ、ちょっと待って」



そういうと、キラは自分の使ってる机の引き出しを開けて、隠しておいたアスランへの誕生日プレゼントを取り出した。
それを持って、キラはアスランの膝の上へと座った。



「はい。 これ、お誕生日おめでとうアスラン」



キラから渡されたプレゼントを受け取ったアスランは嬉しそうに微笑んだ。



「ありがとうキラ。 開けていい?」

「うん。 気に入って貰えるといいな」



その言葉を聞きながら、アスランは膝にキラを乗せながらキラから送られたプレゼントの包装を丁寧に剥がしていった。

小さな箱の中には、アンティークの懐中時計が入っていた。



「キラ・・・・これは、ユーレンさんから貰った大切な懐中時計じゃないか」



キラがアスランに送ったのは、キラの父、ユーレンが大切にしていて娘であるキラに渡した古い懐中時計だった。



「こんな大切なものを貰えないよ」

「いいの。 これを父様から貰ったときにね。
将来、キラが大好きになってその人が大切になってずっと一緒にいてくれる人に渡しなさいって言ってくれたの」



この懐中時計は、父ユーレンが母ヴィアから貰ったものだった。
母も父から受け継いでいたものを父に送った伝統ある物だった。



「・・・・そうか、ありがたく受け取るよキラ」

「受け取ってくれてありがとうアスラン」



アスランはそっと、キラの左手を取ると薬指に一つキスを送った。



「大切にして、これをキラが生んでくれる娘に送らないとね」



イザークやディアッカ、ニコルが二人の状態に、これ以上いてもどうに間ならない事を察して、静かに部屋を後にした。



「ミゲルとラスティが帰ってきたら、アスランの誕生会も兼ねたお茶会でもしますか?」



先ほどの会話でも出ていたアスランの誕生日を出しにして、皆でお茶会をしようとニコルは提案する。



「そうだな。 ニコル何か、いい菓子はあるか?」

「はい。 母がキラさんや皆で食べて欲しいといって、送ってくれたのがありますよ」

「そうか。 なら、俺はラクスが送ってくれた紅茶の葉とコーヒー豆をだそう」



イザークは、婚約者であるラクスから送られてきた大切な紅茶の茶葉とコーヒー豆を出すという。



「そうですか? では、いつもの場所で開きましょう」

「キラとアスランはどうする?」

「ミゲルたちが帰ってきたら、部屋に通信を入れたらいいですし」

「そうだな。 それまでは二人きりにしたやってもいいか」

「ですね」



それまでは、二人をそっとしておこうと三人は思った。





















2006/11/14
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