「愛おしい君に、穏やかな眠りと目覚めを・・・・・・」
殺伐とした戦場で、穏やかな目覚めは期待できない。
いつ、戦闘になるか分からないから。
戦場では、不規則な生活になるのは必至だから。
だが・・・それだからこそ、余計にこんな休暇の日だけでも君に、穏やかな心でいられる空間を提供したい。
君の願いは、理解しているつもりだ。
しかし、本来ならば君はこの戦争から一番無縁な・・・優しい心の持ち主だと、俺は知っているから。
戦場で傷ついた君の心を、少しでも癒すことが出来るのならば、俺はその穏やかな日を護る為に《盾》となることを、誓う。
05. 10cm
漆黒の闇が身を潜め、人口の光がプラント中を照らす時、
個人名義で借りられている一室では穏やかな時間が流れていた。
静かなアラームが鳴る中、その僅かの音に綺麗な眉を寄せ、
瞼の下に隠れていた美しい翡翠の瞳を見せた紺瑠璃色の髪を持つ少年は、自身の腕を枕代わりにし、
安心した表情を無防備にも晒しながら眠っている鳶色の髪を持つ少女に対して優しげな笑みを見せた。
紺瑠璃色の髪を持つ少年は、
鳶色の髪を持つ少女に枕として提供していた腕とは逆で少女を抱き締めていた腕を静かに外し、
少女の眠りを妨げないように注意しながら優しくその美しい鳶色の髪を梳いた。
そんな仕草を何度か繰り返していた少年に、
少女は未だ深い眠りについているにも拘らずその感触を感じているのか嬉しげに微笑を浮かべ、
無意識に少年に対して擦寄り、少年のたくましい胸に頬を寄せた。
その行為は、甘える際に少女の癖になっている為、
少年は驚きもせずに無意識の少女の仕草に先ほど以上の嬉しげに微笑んだ。
しばらくの間、少女の寝顔を堪能していた少年だったが、少女の美しい白い肌に触れたくなったのか、
目の前にある額にそっと、触れるだけのキスを落とした。
その感触に僅かに瞼を震わせた少女だったが、それでも起きることなく眠り続けている。
そんな少女に対し、少年は彼にとって至宝の宝石と思わせる瞳に自分が映らない事を残念に思ったのか、
今度は頬に触れるだけのキスを落とした。
キスを何度か顔中に落としているうちに、眠りから覚醒へと導いたのか先ほどよりも震わせると、
静かに瞼を開き、その中からは綺麗な紫水晶の瞳が現れ、
その瞳には部屋に漏れる朝日の淡い光と翡翠の瞳が映し出されていた。
少女は完全に覚醒していないのか、どこかぼんやりとした表情ではあったが、
目の前にいる人物が尤も信頼している少年だと気付き、
彼しか見せたことのない安心と幸せが合わさった綺麗な微笑を浮かべた。
そんな少女の微笑を見ていた少年もまた、彼女限定の極上の微笑を浮かべ、
10cmほどの空間をゆっくりと0にして彼だけの聖域である淡いピンクの唇に、触れるだけのキスを落とした・・・・・・・。
2007/09/05
Web拍手より収納
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