真実の瞳
― プロローグ ―








黒煙の中、爆発音に乗じて4人の大人たちが腕の中にいるまだ小さい赤ん坊を守るように抱きながら
混乱を利用するかのように、走り去った。
誰もが爆発音を上げている施設の消火活動にあったっているのか大人たちに気付くものはおらず、
誰に呼び止められることなく、目的地へと赴いた。


目的地には、赤ん坊を抱き抱えた大人たちと同じ白衣を身に纏った者たちがジープに乗っていた・・・・。



「・・・・この子を・・・この子たちをよろしくね?」



白衣を着た女性は、車の助手席に乗っている女性に抱いていた赤ん坊をたちを手渡しながら言った。



「やっぱり、一緒に行きましょう!何とか、逃げ切って見せます!!」



助手席に乗る女性は必死に目の前にいる女性たちも一緒に逃げようと説得を試みたが、
女性は儚そうに微笑むと浮かべながら首を緩やかに横へと振った。



「・・・いいえ。 私たちは、この場に残るわ。
・・・この子が大きくなった姿を・・・見ることは叶わないけど・・・少しは、親として出来ることをやってあげたいの」



女性は、男性の中で眠ったままの我が子に視線を移し、慈しみを見せる微笑を浮かべ、優しく額にキスを落とした。



「私たちが時間稼ぎをする。 その間に、より遠くへ向かってくれ。 この場所に、この子たちの両親がいる。
・・既に、通信をしているからこの騒ぎを知っているはずだ」



女性を守るように肩を抱いた男性もまた、女性がキスした赤ん坊を優しく撫でた。



「・・・・了解いたしました。 ・・・ユーレンさんたちもどうか、ご無事で!」



そんな彼らの様子を運転席から見ていた男性は、頷くと強い決意の眼差しを宿しながら男性たちに向かって頷いた。



「私たちは彼らを守る。 ・・・子どもたちのことは、お前たちが守ってくれ」

「「了解」」



そんな彼らは名残惜しそうに、それでも瞳には譲れない決意の光を宿していた。






ジープが見えなくなるまでその場に立ち止まっていた4人は、再び火の海になっている施設へと戻っていった・・・・。







「・・・私たちが出来るのは、あの人たちの目を盗んで貴女たちを安全な場所逃がすことしかないわ・・・・」

「・・・短い間だったが、私たちはお前の親でいて、幸せだったよ。
・・・ココで起きた事は、封印して新しい両親に愛されることを、願う」







女性たちの呟きは、漆黒の闇とその闇の中で光り輝く星々へと吸い込まれていった・・・・・。

















仮初の《平和》。
穏やかな日常が、崩壊する。
自分たちに隠されし真実は、未だ闇の中。
その事実を知るための刻は、ゆっくりと回り始めた。
漆黒の光が、アメジストに降りかかる――――――。





2006/08/29